先日はすてきなひとときを過させていただき、ありがとうございました。
最初の作品「セロ弾きのゴーシュ」は、私もいく度も読み聞かせをした作品でしたので、「この場面では・・あの場面では青木さまはどんなふうに読んで下さるのだろう。」と、ドキドキしながらまちかまえておりました。
ところが、ゴーシュの音楽が友愛に向かって昇華され、芸術に到達した時、読み手サイドにいたはずの私が、いつのまにか聞き手にまわって、ゴーシュと動物たちの交流に笑い、涙して聞き入っているのです
。はっと我にかえった時、こんなふうに物語の世界へ入っていかれる自分に照れながらも感動を覚えたことが不思議な感覚として今も残っております。
「雪渡り」も私の大好きな物語の一つです。狐の子ともたちと人間の子、四郎とかん子の究極のコミニュケーションが成立する時の緊張と感動を我が子や教え子たち共有したくて、何度「雪渡り」を手にしたことでしょう。
子どもたちが賢治の言語リズムに導かれながら、理屈ぬきで「雪渡り」の世界に入り込み、苦もまく狐たちを受容していく純粋性を羨望を感じながら眺めたものでした。
青木さまの朗読には不思議な力がございます。知的でやさしい笑みと、表情・声の変化、黒いカーテンとライトの光。たったこれだけの舞台装置で、子どもをも大人をも賢治の独特の言語世界を通過させ、至福のひとときを共有するコミニュケーションを与えて下さいます。
そして、聞き手に身体レベルで作品を受け入れさせ、語り手と聞き手の共同作業によって、自然界と交歓していく口承の童話の世界へいざなって下さるのです。
こんなすてきな異空間を旅させて下さった青木さまと、企画して下さった皆様に深く感謝申し上げます。
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