花月文庫紹介

江戸文学・庶民文化を愛した飯島花月

飯島花月


「花月文庫」物語(1)

長野県図書館協会顧問・元上田市立図書館長 宮下明彦

1.「花月文庫」等デジタルアーカイブ・活用推進事業
長野県図書館等協働機構(長野県図書館協会が平成24年度に設立した団体)は令和6年度から上田図書館所蔵の「花月文庫」を取り上げ、「花月文庫」等デジタルアーカイブ・活用推進事業に着手します。
貴重な「花月文庫」の原本が見られ、読めるように翻刻・現代訳し、解説を付すとともに、朗読により耳からも楽しめ、記念講演会も開催する計画です。

2.「花月文庫」とは
花月翁は上田城下町に文久3年(1863)に生まれ、昭和6年に没しました。本名は飯島保作、花月はその号です。花月翁は終生殆ど銀行業に終始し、晩年は第十九銀行頭取として活躍し、昭和6年の金融恐慌に際し当銀行と第六十三銀行を合併し八十二銀行の創立の功成らんとして病に倒れました。          
花月翁は業務の余暇、広く各種各様の書籍を収集し整理し、これをよく読み、よく書き、その集積が「花月文庫」をなしました。上田図書館所蔵の「花月文庫」は約1万冊に上る特殊コレクションで、江戸文学、近世庶民文化を今に伝える和本の山の数々と明治以降の洋本からなります。
黄表紙・洒落本・人情本・滑稽本・合巻等江戸時代の小説類が数多く収集され、川柳、狂歌の書籍も充実しており、百人一首は書目が多彩で「変わり百人一首」を揃えています。さらに、郷土史関係の第一級資料も多く収集されています。
また、「国書総目録」に搭載のない書目が275点、他に一本から五本のみ存在が知られているものが157点あり、花月翁の収集方針が天下の稀覯本を集めることに徹していたといわれています。
現在、「花月文庫」のような江戸文学・庶民文化の特殊コレクションを所蔵するのは、徳川御三家の文庫、前田家の尊経閣文庫、東大・慶応・早稲田大学図書館等の大学図書館、東京都立図書館、八戸市立図書館等、県内では真田宝物館等に限られます。